若恋【完】



携帯には登録されていない番号を押し、相手が出るのを確認する。



「もしもし、大神です。」



『…お久しぶりですね。三年ぶりでしょうか?』



静かで懐かしい声が過去の苦い記憶を思い起こさせる。



りおに出会う数年前に、唯一俺の話し相手になった少女。

ヤクザの世界にどっぷりとハマっていた俺に怖がりもせずに近づいてきて話し相手になった少女。

初めて龍神会と事件を起こした直後にその少女が向こう側の幹部の娘だと知った。



―――生きていたら



あの少女はどんな女性に成長したのか…わからない。



懐かしい声を聞いているうちに苦い思いが強くなる。

向こうもそう思ったのかもしれなかった。



『…大神さまの言いたいことはわかっております。こちらでお預かりしているお嬢さんのことですね?』




< 156 / 417 >

この作品をシェア

pagetop