若恋【完】
息ができないほど強く抱き寄せて腕の中に閉じ込める。
「ケガをしてるのか?」
「わたしじゃないの」
そう言ったら奏さんが榊さんを振り返った。
奏さんがぐったりしている丸眼鏡さんと榊さんの視線の先を読む。
―――背中を射たれました。
奏さんの瞳が陰を帯びて難しい顔になった。
「急いでここを出ましょう」
「うん」
わたしに小さく口づけた後、奏さんがわたしから丸眼鏡さんの腕を取って体を支えた。
「しっかりしろ!」
「しっかりして!」
祈るようにわたしも丸眼鏡さんの体を支えて部屋を出る。
「車まで走るぞ」