若恋【完】
「仁!!」
奏さんが仁お兄ちゃんの名を叫んだ。
正面からは仁お兄ちゃんや毅さん、前広さんたちの姿が見えた。
毅さんが走り込んできてわたしの腕を引いて庇うようにわたしの盾となり走り出す。
「乗ってください!」
わたしがここに乗り込んできた時の車に押し込められる。
乗ると同時に車は急発進した。
「りお、その血…」
仁お兄ちゃんは絶句した。
「…奏さんは?」
息が切れる。
いつもは奏さんが隣に乗るのに…不安で心配でそばにいないのが身を切られるように痛い。
「…奏さんは?」
「後ろの車にいるよ、心配すんな」
わたしたちが正面から出た時には発砲音がしてたからもしかして撃たれたのかもしれないと…
「心配すんなよ。若は無事だ」
「………」
「それより、何があったんだ?」
わたしの手のひらを見つめる。まだ震えが止まらない、この手に丸眼鏡さんの血がたくさんついて…