若恋【完】
奏さんを抱き締めて。
奏さんを抱き締めて。
ガチッ
車のドアを開けたら、一気に感情が吹き出した。
「奏さん」
丸眼鏡さんの血で元の服の色がわからないくらいになってる奏さんの。その頬に指を伸ばす。
触れたら消えてしまいそうなそんな気がしたから…
わたしの大好きな奏さんの顔を見せて。
消えたりしないって。
わたしの前からいなくならないって約束して。
奏さんの右手がわたしの指先を握り奏さんの胸に押し付けた。
「俺は生きてるぞ」
「…っ、ひっく」
指先に奏さんの力強い心臓の鼓動が響く。
ドクンドクン
ドクンドクン
泣いている場合じゃないかもしれない。
だけど、泣けてくるの。
「ふえっ、ひっく」
生きてるそれだけでいいの。
命をいつか落とす。
そんな世界に身を置いている奏さんのそばで生きていきたい。