若恋【完】
―――誰か助けて
このまま死なせたりしないで。
奏さんに抱き抱えられてる身体が、わたしが擦っているこの手が白く冷たくなっていくよ。
誰でもいいから助けて!
わたしの前にいる丸眼鏡さんが瞼を閉じて深く深く息をする。
ひとつ呼吸して。
ふたつ呼吸して。
口元には穏やかにさえ思える笑みを浮かべて…
「丸井!!」
奏さんが名を叫ぶと、あの世に逝きかけた魂が戻ってきて呼吸して。
途絶えがちになる息づかいをそばにいた誰もが見守っている。
奏さん、隣に座ってる榊さん。運転席に座ったままの毅さん。助手席の前広さん。仁お兄ちゃん…
奏さん奪還に車を出してくれたみんなが静かに見守ってる…
「丸井!!」
何度叫んでも揺さぶっても反応しなくなった丸眼鏡さんの身体を力を込めて抱き抱えてる。
「………」
「………」
「………」