若恋【完】
今、この幸せはわたしが一言「赤ちゃんができたの」って言ったなら壊れてしまうものかもしれない…
今、奏さんが隣にいる幸せっていうのは、わたしのひとことであっけなく壊れてしまうものかもしれない…
こわい。
奏さんを失うかもしれないのがこわい。
「どうした?まだ寒いのか?」
「………」
「温かい飲み物を買ってくるぞ、何がいい?」
「………」
「りお?どうした?」
「…………」
覗きこんでくる黒曜石の瞳。
わたしの大好きな奏さんの瞳が心配気に揺れる。
「奏さん…大好きだよ」
ふっ。
口の端を上げて小さく笑みをこぼした。
「―――俺もだ」