若恋【完】
「す、すごい!」
タクシーを降りてロビー吹き抜けの下には滝があり錦鯉が泳いでいた。
「大神奏さま、りおさまはこちらのカードキーをどうぞ」
「天宮仁さま、毅さまの鍵はこちらです」
それぞれにキーを受け取り部屋へ入る
「疲れただろ、今日はとにかく風呂に入って寝ろ」
「うん、でもみんなと夕食は?」
「ルームサービスでも取ってやるから」
「ん?うん」
わたしは持ってきた荷物の中からパジャマを出した。タオルを持ってシャワー室に入る。
バタン。
ドアを閉めてすぐそばに半裸が写る鏡が見えた。
『あなたのお腹の中に赤ちゃんがいるかもしれないわ』
さっきの小児科の先生の声が耳から離れない。
鏡で上半身が写った瞬間にまた声を思い出す。
『生理前には胸が張ったりするものだけど、…胸がチクチクしたりはしない?』
『お腹に赤ちゃんがいるとして。あなたはその命を闇に葬りたいなんて思うの?』