若恋【完】
トイレの鏡に向かって自分にたずねる。
いきなり吐きたくなって、吐いてしまったらさっぱりした…
ねえ、これってつわりって言うの?
わたしのお腹には赤ちゃんがいるっていうの?
それとも、ただの風邪?
それとも、ただの食べ過ぎ?
わからないよ。誰か教えて?
わたしに何が起こってるの?
鏡を見てるわたしは深刻な顔をしている。
奏さんにこんな顔を見せてはいけないって慌ててくちびるにリップを塗る。
「りお、どうかしたのか?」
旅館の浴衣に着替えながら奏さんが温泉に行く支度をしてわたしに声をかけた。
「ううん、なんでもないよ」
あくまでも冷静に。
感のいい奏さんに体調が優れないことを悟られないように。
心配をかけないように。
細心の注意をはらって答えた。
体調の変化に自分でも戸惑っているのに悟られたくない。