若恋【完】
ひとりの女に執着することもなく、一夜限りの遊びに日々興じていたこと。
わたしと出会う前の奏さんは高級マンションの最上階の夜景が見える部屋で、とっかえひっかえ女のひとを抱いてたこと。
そして、奏さんを手に入れたくてわたしを拐ってナイフを突きつけた女のひともいたっけ。
少しだけ胸の奥がズキッと痛んだ。
わたしと出会う前の奏さんの過去をどうにもできないのに、他の女のひとの話しに触れられるのは切なかった。
自然に顔が下に向く。
「榊が近況報告しにきて、高校生に惚れて半年以上も手を出さずにいると知った時は、バカなヤツだと笑いもしたが、…わたしが間違ってたと気づいた」
奏さんのお父さんの声のトーンが変わった。
「認めるわけにはいかない」
「!!」
「………」
弾かれたように奏さんが椅子から立ち上がった。