若恋【完】
わたしの頭に奏さんのお父さんの手のひらを乗せてポンポンと撫でてくれた。
「丈夫な孫を頼むぞ」
小さいけどお父さんの声音は穏やかだった。
「丈夫な孫を頼むぞ」
「あ、ありがとう…ございます」
一気に涙が吹き出してきてポロポロと溢れた。
奏さんの赤ちゃんを産んでもいいってわかったから。
お腹の中の命が望まれてるって、うれしくて、お父さんのひとことが重くて。
泣ける。
「組長、留恵さんが見えられました」
「おう、来たか!」
「母さん」
入り口に立っている榊さんから奏さんのお母さんが来たと聞いて、袖で涙を拭う。
「りおさん」
お母さんがそばにパタパタと小走りに寄ってきた。
「大丈夫?」
「あなた、奏。なんでわたしにりおさんの赤ちゃんのこと黙っていたのよ」
頬っぺたを膨らましてわたしのもとに来てわたしに抱きついた。