若恋【完】
「しかもカタギのお嬢さんだって聞いてたし。わたしみたいにいろいろと苦労をするのを若いひとにはしてほしくなかった。…まあ、純粋に奏を若い娘に盗られたくなかったのだけれど…」
ゴクッ
「だからって斬り合うなんて、ねえ」
ちらっとお父さんの方へ。
「留恵、結果的にはわたしも奏も、りおさんも無事だったからいいだろ」
「母さん、親父を苛めても駄目だぞ」
奏さんがため息をついた。
「母さん、りおに子ができたからここに来たわけじゃないんだ」
「―――え?」
「りおには俺の生きていく世界を知ってほしかったから連れてきたんだ」
「知って?」
「だから連れてきた。この間、龍神会潰した時に俺のいる世界についていくって言ってくれたからな」
―――うん、言ったね。
理不尽に命が散ることもある世界を見て、それでも奏さんと一緒に乗り越えると決めたんだ。