若恋【完】
仁お兄ちゃんを護衛につけてくれるって言ってるけど、そうしたら奏さんを身近で護るひとが少なくなってしまう。
「いいよ、わたしは危なくなんてないから。奏さんの方が危険でしょ?」
「おまえがひとりでいるほうが心配だ」
「そんなことないよ」
「前に簡単に拐われたのは誰だよ」
「…わたし、です」
仁お兄ちゃんが根回しした奏さんの女にナイフを突き付けられて車に押し込められて拐われた。
そんな過去があるから…
奏さんは離れることを心配するんだ。
ヤクザな自分と関わったがために危険な目に合うわたしを心配する。
「仁ならお前を命をかけて護ってくれるだろうからな。安心だ」
奏さんはわたしを包むようにそっと腕を回した。
「なんかあってからでは遅えからな」
「…奏さん」
着崩れしないように抱きしめる。
「毅、仁を呼べ」