若恋【完】
命をかけて
わたしと仁お兄ちゃんがホール横のソファーの前にいたら、挨拶を終えた奏さんが歩み寄ってきた。
「ふたりはみつかったか?」
低くて冷静な声。
「ああ、ふたりをみつけた」
「うん、みつけたよ」
わたしが見上げると奏さんは口の端だけ上げた。
「そうか…、で、どうする?」
「りおがふたりと話したいって言ってんだ」
仁お兄ちゃんがため息をつきながら告げると、奏さんはピクッと眉を吊り上げた。
「なんだと?」
ギッと音が出る視線にわたしは耐えた。
「わたし彼女たちと話がしたいの。だからお願い。彼女たちが故郷に帰れるようにして。それで体を売らなくても暮らしていける仕事を紹介して」
お願い。
ふたりを助けるには奏さんの力が必要なの。
奏さんの差し伸べてくれる手が必要なの。
「…祖国へも帰せる。仕事も与える。だが、りおがふたりに接触するのは許さねぇ」