若恋【完】
「おまえはいつも俺を驚かせるんだな。その体のどこに、俺を、みんなを突き動かすパワーがあるんだ」
奏さんの鼓動が早い。
「奏さん?」
「もしおまえに何かあったら」
「そんなの何にもないよ。ちゃんと話をすれば分かり合えるよ」
「世の中はそんなに甘いもんじゃねぇ」
「だけど、このままふたりが不幸になるのを黙ってみてろって言うの?奏さんが狙われてるのわかってて黙ってみてろっていうの?」
「そんなこと言ってねえ」
「だったら!」
「………」
無言になる奏さん。
「若、」
仁お兄ちゃんが横から遮るように言う。
「わかってる」
奏さんが不意にわたしの体を離した。
「りおは俺が止めても行くんだろう」
「うん」
「だったらやれ。俺は俺のやり方でおまえを守る」
「…奏さん、ありがと」
「ありがとじゃねぇよ。胸が潰れそうだ」
わたしに背を向ける奏さんが泣いてるような気がしたのは気のせい?