若恋【完】
ふたりの名は桐花と桃花。
どう考えても本名じゃなくて偽名。
髭を立てた偉そうなひとにお金を握らせたら知っていることを自慢気に教えてくれた。
三年前に日本へ来たと言ってたけど、メンバーに入ってきたのは一年ほど前で、その前は何をしていたのか謎だった。
メンバーになってからは人付き合いは苦手なのか特定のひととしか話をしないらしい。
お酒が好きなようで夜の街に出かけることが多いって話だった。
夜の街で、ヤクザな世界にハマってしまったのかもしれない。
髭を立てたひとにお願いして、彼女たちをうまく呼びだしてもらった。
小さな控え室で呼ばれた桐花さん桃花さんがわたしをじっと見つめてる。
「わたしたちにナニか用事でもアリマシタカ?」
ふたりは怪訝な表情だった。
「わたし聞いてしまったんです」
「!」
勘の鋭い桐花さんが弾かれたように立ち上がった。
「ええ、聞いちゃったんです」