若恋【完】


立ち上がった桐花さんをじっと見上げた。

みるみるうちに顔色が悪くなる。


「…聞いたってナニヲ?」


震える声で言い、わたしを射殺すような眼差しを向ける。



「…レディースルームで桐花さんと桃花さんの話してるのを偶然聞いてしまいました」

「………」

「今なら引き返せます。」

「………」

「今なら引き返せるんです」

桐花さんの横で桃花さんが静かに立ち上がった。

赤いチャイナドレスみたいな衣装の裾を捲り、太ももから取り出した銃を悠然と構える。


「知られたカラには生かしてはおけないわ」

カチャ

安全装置を外して銃口の先をわたしに突きつける。


ドキンドキン
ドキンドキン


心臓が早鐘のように打つ。
頭に血が逆流していく。

怖さと緊張で体に力が入る。




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