若恋【完】
嘲笑う黒幕
桐花さんと桃花さんがいない。
ショーが終わるまではこの部屋にいてね。ここが一番安全だからって告げて、彼女たちも「そうね」って言ってくれてたのに…
このパーティーが終われば祖国に帰れるのに。
どこに行ったの?
逃げ出したの?
そんなはずない。
逃げ出してもまた闇に呑まれてしまうのはわかってる。
「桐花さん、桃花さん!」
叫んだ声は部屋に吸い取られて虚しく響いた。
ふ。
テーブルの上に手紙があるのに気づいてそれを読んだ。
『アリガトウ。必ず戻ってきます』
そうひとこと。
わたしは手紙を握りしめて奏さんや榊さん、仁お兄ちゃんのいたところまで走った。
部屋を出てすぐのところにいるのを知ってる。
「奏さん!」
驚いた顔した奏さんがわたしを受け止めた。
「どうした?」
わたしが握ってる紙に気づいて仁お兄ちゃんが取り上げて開いた。