若恋【完】
「桐花さんと桃花さんが消えたの」
仁お兄ちゃんが開いて奏さんに見せると眉を寄せた。
「ふたりはアレをまだ持ってるか?」
「アレを?」
考えてみたらふたりから銃を預かってはいないことに気づいた。
「…持ってる」
「そうか」
「若、防弾の、」
「いらねぇ」
仁お兄ちゃんが言った言葉を遮り拒否する。
ふたりは奏さんをどこからか狙うだろうか?
狙わない。
わたしはそう思ってる。
奏さんや奏さんのお父さんをもう狙うことはないと思う。
「りおが命をかけて彼女たちを説得したんだ。そのふたりは必ず戻ってくるって信じるさ」
防弾チョッキも着用しないと言い切る奏さんのわたしを心配させない強い意志があった。
「彼女ふたりを見かけても無理に部屋に連れ戻したりするな。好きなようにさせろ。ふたりは必ず戻ってくると書いてあったんだろ?」