若恋【完】

奏さんのお父さんお母さん。
ふたりのお兄さん。
会場に集まった大神の関係者たちの前での盛大な御披露目を無事に終えて。


しばらくしてショーが始まった。



わたしの側には仁お兄ちゃん。

少し離れたところに奏さんのお父さんとお母さんには榊さんと拓也さん。

奏さんには一也さんと前広さんがついていて。



賑やかにショーが始まると奏さんは中央の丸テーブルに向かって静かに歩いていった。


ワインを運んできたひとを呼び止めてグラスをふたつ手に取りながらゆっくりと。



奏さんが近づいていく初老のひと。

白髪まじりの頭はオールバックにして、でっぷりした体型で、彼女たちが言ってた『狸』って言っていたのがそのひとだったと理解できた。



『モリウチの狸』



奏さんが森内の狸の隣に並び声を掛ける。

何事かを企んでいるはずなのに微塵も感じさせない。



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