若恋【完】
大きな剣を振り回し美しく着飾った女性たちが真っ赤に燃えて宙を舞う。
一歩前に出た仁お兄ちゃんがわたしを庇うように立つ。
奏さんのお父さんの前後にもお母さんの前にもそれぞれに榊さんたちがいる。
奏さんの前には―――
誰もいない。
余裕の表情に笑みさえ浮かべてる。
舞台から火の玉のような踊り子たちが剣を操り降ってくる。
奏さんの隣の森内狸は蒼い顔してグラスを持ち震えている。
「どうした森内?」
「いえ、なんでも」
吹き出す汗を拭う。
動揺して舞台から降ってくる彼女たちの剣の先を避ける。
当たりはしないのに恐怖で顔がひきつっている。
銅鑼の音が辺りに響いて奏さんの横で、森内狸が逃げ出そうと舞台に背を向けた。
「あ、」
逃げる!
わたしがそう思った瞬間に、一也さんが森内狸の二の腕を捕らえた。