若恋【完】


肩越しに振り向くと、奏さんがククッと笑ったのが見えた。


「俺がこのまま狩野を逃がすと思うか」

「奏さん」

「狩野が大神を潰そうとするならそれ相応の代償を払ってもらう」


裏の世界を生きる奏さんの姿が誇らしく思えた。

頭が切れて行動が早くて、誰もが憧れて。

榊さんだって、仁お兄ちゃんだって、毅さん、一也さんもみんなみんな奏さんを愛してる。

孤高で気高くて。

みんなが奏さんを慕ってる。


大好きで。

わたしを大事にしてくれる奏さんが大好きで。

ずっと側にいたい。

奏さんのそばにいることがどんなにか大変でも離れたくない。



「狩野を追い詰めるのはできるから大丈夫だ」

頭を優しく撫でられてわたしは奏さんを仰ぎ見た。

「おまえが不安に思うことねぇぞ」


「うん」


「おまえが狙われるかもしれねえのに放っておけるわけねえだろ」




< 331 / 417 >

この作品をシェア

pagetop