若恋【完】


わたしを包むように抱き締める。



「狩野は捕まえるから心配すんな」

「うん」

「俺は大丈夫だから。おまえの方が心配だ」



「走り回って腹ん中のガキは大丈夫なのか?無茶するな」


耳元で囁く。

わたしを安心させてくれるその声をいつまでも聞いていたい…



「若、狩野が来ました」


突然に甘い一瞬がぶっ飛んだ。

まだざわめきが収まらなかった会場内がまたざわつく。


狩野を捕まえてきたと思ったのに、彼は余裕の表情でつかつかと歩いてきて、あまりの堂々とした態度に面食らった。



「若がわたしを呼んでると聞いてきたのですが、わたしに何か用でも?」

ピシッとしたパーティー用の服。

軽い身のこなしでこっちに歩いてくる。



「狩野、森内がさっき叫んだ声がお前には聞こえたよな?」

「ええ、会場から引き摺り出された時わたしの名も聞こえました」





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