若恋【完】
銃を拾おうする狩野の指が奏さんの靴に踏まれてギリギリと音を立てる。
「その銃はおまえのだな」
「違う」
「俺は気が短いから素直に白状したほうがいいぞ」
狩野が下から恨めしげに見上げ、懐から閃く何かを繰り出した。
「おっと」
刹那、かわして反転して狩野の手にした得物を蹴り上げると、
得物は宙を切り狩野の顔面横に突き刺さった。
「もう観念したほうがいいですね。命を取られるか、じっとしてるか。いずれにしても地獄の苦しみですけどね」
「じっとしてた方が身のためだぜ。蜂の巣にされるより、海に沈められた方がいいだろ?」
ため息を深く吐き出した榊さんと、仁お兄ちゃん。
どっちも生かしておけないってことなんだろう。
そう理解した。
「りお、ふたりを連れて毅と前広と部屋へ行け」
しばらく部屋から一歩も出るな。