若恋【完】



「…奏さんが」

「俺が?」



「…いなくなる、夢」



まだ夢だったって信じられないくらいリアルな夢だった。

忘れたいのに、

忘れたいのに、夢の中のわたしの叫びも喉に残ってる。

奏さんにすがり付いて泣き叫んだ感触だって。

こんなにはっきり残ってて。




「俺はおまえのそばからいなくなったりしない」


ぎゅっ

強く抱き締められてもその温もりが、鼓動が伝わってきていても、夢の余韻を拭い去ることはできなくて。

切なくて。

悲しみの欠片をどこにも捨てることができなくて。


針で心臓を刺されているみたいに、激痛が走る。



ひっく。

込み上げてくる感情に負ける。
涙が溢れ出る。



ひっく、

「…奏さん、いなくならないで」





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