若恋【完】



夢。

ほんの数秒間の夢。




そんな短い刹那見た夢は、わたしの心を凍えさせた。



仄かな灯りの中で、奏さんの体を掻き抱く。




「いなくならないで」

いなくならないで。
わたしの前から夢でも消えたりしないで。
置いてきぼりにしないで。
ずっとそばにいて。



―――ずっと。






「おまえを置いていったりしない」


幼子にするように胡座を組んだ中にわたしを座らせ、背中から抱き締める。



「約束する。おまえを置いていったりしない」







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