若恋【完】


「おまえの前から消えたりしない」



スタンドの揺らぐ灯り。


奏さんの声が耳元でするとせつなさと悲しみが少しずつ薄らいでいく。



「いなく、ならないで」


「バカだな。俺はいつだっておまえのそばにいる」


ギュッ

力がこもる。

幻じゃない。

わたしの大好きな奏さんは消えたりしない。

さっきの夢のように儚くなったりしない。

わたしを置いていなくなったりしない。

いつだってわたしを見ていてくれる。



―――だから




「安心しろ、りお。俺はいつだっておまえと共にいる」


囁く甘さにゆっくりと目を閉じる。

安心していい。

幻みたいに奏さんは消えたりしない。

夢の中でのようにみんなを残していくなんてことはない。




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