若恋【完】
「医者も言ってただろう?
時が来なければ赤ちゃんは生まれませんってな」
仁お兄ちゃんはあくまでも他人事みたいにわたしが唸っているのを見て笑ってる。
「痛みの合間にちゃんとご飯食べることができるんですから大丈夫ですよ」
榊さんだってほらやっぱり他人事。
「奏さん、痛いよぉ」
間隔がちょっとずつだけど狭まってきて痛さも増してくる。
半泣きで奏さんを見上げると、仁お兄ちゃんが甘やかすなって意地悪するもんだから睨んでやった。
脇で榊さんがクスクス笑う。
「若、もうそろそろ病院に車を出しましょうか?」
やっと重い腰を上げた榊さんは、仁お兄ちゃんの襟首をぐいと引っ張った。
「何すんだよ榊」
「仁、車を出しに行きましょう」
「やだよ」
「行くんです」
「ちっ!」
わたしをからかってた仁お兄ちゃんは気分を害して榊さんの後を足音を立てて追いかけていく。