若恋【完】
終いには、頭や背中を撫でてくれる奏さんの手をかじったり。
「そろそろ、分娩室に移動しますね」
師長が呼んでくれた時にはすでにぐったり。
同じように奏さんの顔にも疲れが滲んでた。
「旦那さまもどうぞ」
えっ?
耳を疑った。
「いや、俺は―――見ていられない」
ここで待つ。
やんわりと断ってくれたのにはほっとした。
赤ちゃんの誕生は見せたい気持ちもあったけど、わたしが苦しむのを見せたくなかった。
「りお、大丈夫だ。俺はここにいる。しっかりやってこい」
「うん」
扉が閉じる前に、奏さんの手をしっかり握りしめた。
―――うん、いってくるね