若恋【完】
「どうした?りお」
看護師さんに支えられて静養室から部屋に戻ろうと歩いていたら、階段を上がってきた奏さんと会った。
「点滴2本終わったから後は部屋で休むの」
「大丈夫なのか?出血が止まらなかったって聞いたぞ」
眉をひそめる奏さんは看護師さんからわたしを受け取り、そのまま掬い上げるようにして抱き上げた。
「や、奏さん、いいってば」
「いい。黙って抱かれてろ」
「だって、恥ずかしい」
「誰も見てねえよ」
「まあ、そうだけど…」
でもやっぱり恥ずかしいよ。
お姫様だっこなんて。
大事に大事に抱えて歩いて、奏さんがベッドの上にわたしを降ろした。
「無理すんな」
数時間前に出産を終えたわたしを心の底から心配してる。
「黙って横になってろよ」
わたしにタオルケットを掛けて体を冷やさないようにと気遣う。