若恋【完】
産婦人科なんだから、居るのは女性と赤ちゃん、そして極親しい身内だけ。
いくら榊さんや仁お兄ちゃんでも護衛でここにいるのはちょっと。
だから、奏さんは自分が泊まるって言うのもわかる。
それで、ここに来たときに、組のことを榊さんに頼むって言ったんだってわかった。
「ただ単に、俺がおまえのそばにいたいだけなんだけどな」
ええっ?
ベッドのすぐ側の椅子に腰かけてる奏さんを見つめた。
「家にひとりでいたとしても、おまえのことが心配で眠れないに決まってる」
「わたしは…大丈夫だよ?」
「それは何度も聞いたぞ。わたしは大丈夫だってな。…だけど大丈夫って言う時は本当は大丈夫じゃなかったりすんだよ」
「………」
「とにかく俺はおまえとガキの側にいる」
宣言。
奏さんがそう言ったら、覆ることはない。
「…奏さん」
「あ?」
「…奏さん、手を握って」
タオルケットから少しだけ手を出すと、椅子を引き摺ってすぐそばにきた奏さんがその手を握りしめた。
「奏さんの手、温かいね」
本当に優しくて温かい。
握ってもらってるだけでふんわりとしてくる。