若恋【完】
赤ちゃんが生まれて4日目の夜中。
うつらうつらしていたわたしは、カタカタという物音で廊下に誰かがいる気配に気づいた。
「ねぇ、奏さん。廊下に誰かがいるの」
耳を澄ませば微かに男のひとの声。
靴音。
誰かと話してるのか女のひとの掠れたような泣いてるようなそんな声も混じってた。
ミルクをあげる時間にはちよっと早かったけど、気配が気になったわたしは疲れて眠そうな奏さんに後は声を掛けずに部屋を抜け出した。
新生児室の前にいたのは真っ黒の服上下を着て、黒の帽子にサングラス、マスクをした背の高い明らかに怪しい人物。
その足元で、わたしと同じ日に出産して友達になった順子さんが崩れるようにしてしゃがみこみ壁に寄りかかってた。
「キャッ」
思わず悲鳴をあげかけて慌てて飲み込んだ。
黒ずくめの男はわたしに気づいて、人が集まってくる前に慌てふためいて、両手に持っていたものごと、体当たりする勢いで向かってきた。