若恋【完】
ぶつかる寸前にかわして、黒ずくめの男はそのまま階下へ逃げようとしたけど、わたしの叫びに驚いて部屋から出てきた奏さんと出会い頭にぶつかった。
「奏さん!」
黒ずくめの腕から滑り落ちていくものの正体が明らかになる。
何かに包まれていたもの。
―――え?
赤ちゃん?
白いおくるみに包まれた赤ちゃんが黒ずくめが伸ばした腕からすり抜けていく。
くるりと包まれた赤ちゃんの頭が床に落ちていく。
わたしも手を伸ばす。
すべてがスローモーションの画像のよう。
―――間に合わない!
息を飲んで固まるわたしの前で、黒ずくめが体勢を立て直して体を下に入れるように転がりうまくキャッチした。
そのまま軽い身のこなしでスルスルと奏さんの脇を過ぎようとする。
「待て」
「!」
無言で脇を抜けようとする黒ずくめに奏さんが低く唸った。