若恋【完】
「おまえ、何者だ」
黒いサングラスをしている奥の感情は読み取れない。
それに加えて無言。
顔大半を覆っているマスクの下からも何の反応もない。
「りお、下がってろ」
「奏さん!」
「俺の息子を拐ってどうする気だ?」
鋭い眼をした奏さんが、わたしを庇うように後ろに押しやり、足を広げて腰を落とし背中に腕を構えた。
「え?」
なんて言ったの?
今なんて言ったの?
聞き間違いじゃなければ、わたしの赤ちゃんを拐う?
「俺の息子を返せ」
奏さんが唸るように告げ、背中に青い炎のような怒りが立ち昇る。
黒ずくめが抱えている白い包みの中には、確かに生まれて間もない子がいる。
それが。
「わたしの、赤ちゃん?」