若恋【完】


「その赤ん坊は俺の子だろう?おまえは何者だ?」


黒ずくめの男が一歩後ろに下がる。
距離を取り、包みを抱く手に力を入れる。


「その赤ん坊をどうする気だ?」


奏さんが一歩前に出て、黒ずくめの男が更に下がる。

黒ずくめがちらっと横を向いた。さっき出てきた新生児室の奥にはもうひとつ一階へ降りる階段がある。


その距離を測ってる。




「答えろ。おまえは何者で、なんで俺の子を拐いにくる?」


飛びかかれば生まれたばかりの赤ちゃんが潰れてしまうかも知れない。
傷ついてしまうかもしれない。



そう思うと迂闊に近寄れない。



手に抱いてる命を床に叩きつけてしまう可能性だってある。






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