若恋【完】



こんな最低な男。

殴っても殴り足りない。





えっ、えぐっ、ひっく。



泣きながら思いっきり叩いても、最低男には響かない。



彼女の気持ちは届かない。



―――届かない







「よせ。りおの手が壊れる」


泣きながら叩くわたしを止めたのは、わたしの大好きな奏さんの手だった。



「もうよせ。これ以上殴ったらりおの手の方がいかれちまうだろ」


わたしをそっと包み込むように抱き寄せた。

怒りと悲しみで打ち震えるわたしを宥めるように優しくて包み込む。



「…奏さん、わたし悔しい」


「そう、だな」

「あんな男、…きらい」

「俺もだよ」

「…始末、って、…言ったんだよ」

「………」

「…始末、って、」



もう声にならなかった。

奏さんは何も言うなってわたしのくちびるをキスで塞ぐ。








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