若恋【完】
奏さんはわたしの髪を撫でる手を止めた。
「……だめだ」
呟くような小さな声に奏さんの顔を見た。
「りおは俺の女だと思われて他の組の奴に狙われている。今、俺から離れるのは危険だ」
なに?どういうこと?
「わたしは普通の高校生だし、危険なんて―――」
「とにかく…だめだ」
奏さんはそう言うと、わたしの膝の下と背中に腕を回しひょいと抱き上げて窓辺に立った。
「おまえは俺の命を救ってくれた恩人だ」
「…あれは偶然で、たまたま」
「おまえは何もわかってない」
包みこんでくれた腕に力がこもる。
「俺がどんなにおまえが大切なのか」
とても優しい声。