若恋【完】
みんなのもとへ
退院の日。
病院まで榊さんと仁お兄ちゃんが迎えにきてくれた。
わたしの腕の中でスヤスヤと眠る子を覗き込むと。
「若にそっくりですね」
榊さんは満足げに微笑み、仁お兄ちゃんが、
「よく似てる」
って、破顔した。
「若、御子の名前は決めたんですか?」
榊さんが車のドアを開けながら聞いた。
「ああ、もう決めてある」
「どんなお名前です?」
「まだ、内緒だ」
奏さんが面白そうに笑い、わたしの隣に座り、スヤスヤ眠っている我が子の頬をつついた。
「いい名前が浮かんだんだ。今日は祝いでみんなが集まるからな、その時に言うつもりだ」
奏さんの声はますます優しくなる。
出逢った時よりも優しさが増してる。