若恋【完】
「…奏さん!仁さん!榊さん!どこ!?」
人混みの中、下駄を踏まれて転び、せっかく可愛い浴衣を着てお洒落をしてきたたのに、もう泣きたいくらいぐちゃぐちゃになってる。
「奏さん!どこ?みんなどこにいるの!?」
花火大会に無理を言って連れてきてもらったのに、出店を覗いてはしゃいでいるうちにみんなとはぐれてしまった。
奏さんから貰った大事な携帯電話もさっき転んだ拍子に、すでに落としてしまっている。
連絡も取れないし。
どうしよう。
奏さんたちとはぐれて、人混みの中ひとりぼっちで心細くて、はしゃいで走り回ってたのがバカみたいに思えてきて、鼻の奥がツーンとして涙が滲んだ。
「あらら?誰かとはぐれちゃったの?」
柔らかい声に顔を上げると、優しそうな男の人が3人ガードレールに腰掛けこっちを向いていた。