若恋【完】
「迷子になったの?」
「あちゃあ、迷子だわ、完全に」
堪えきれずしゃくりあげるのを見て、二十歳くらいの人が、
「この人混みだもんね。はぐれたりしたらまず見つからないよね」
優しく声を掛けてくれた。
「派手に転んでこんなに汚れちゃって」
浴衣についた泥を払ってくれて、「ケガもしたんでしょ?」って、膝に滲んだ血をハンカチで押さえてくれた。
「あ、ありがとう」
「いやいや、どういたしまして。
ところで。ひとりでいるのも、なんでしょ?俺らといなよ。俺らも連れとはぐれちゃってさ。ここにいたら見つかるかもしれないよ」
にこっ。
優しそうな3人はそれぞれに頷いた。
「浴衣姿、かわいいよ」
「友達と花火大会に来たの?」
「その連れって彼氏?」
他愛ない話をしてるうちに時間が過ぎていく。
「あ。浴衣の帯が緩んじゃってるね。直してあげるから、向こうの木の陰に行こうか」