若恋【完】
命の恩人
朝。
時間の許す限り奏さんも一緒に車に乗りわたしを学校に送り届けてくれる。
今日も奏さんは榊さんに車を出せって命じて後部座席にわたしと座った。
「りお、今日から衣替えか?」
紺のブレザー姿、赤いネクタイになったわたしに奏さんは目を細めて、ポニーテールを結った紺のリボンを曲がってるぞって直してくれた。
わたしを学校に送り届けると、
奏さんは、「会社に一応顔出してくる。今日は帰りに迎えにこれないから、代わりにまた榊と仁を寄越す」
と、告げて走り去っていった。
「りお」
「ん?」
昇降口で靴を履いたら、目の前には小中学校からずっと一緒のクラスの立花樹がわたしを見下ろしてた。
「ケガはもういいのか?」
「まあまあね」
「そっかカバン持ってやるよ」
「ありがと」
中学校の時も、今年の春に発砲事件に関わった時も、今も態度が全くかわらないのは幼馴染みの樹くらいのものだ。