若恋【完】
仁の裏切り
翌朝。
好きな人がいるからと樹に告白の返事をすると、
「仕方がないよな。大神物産の三男坊だろ?」
って、笑ってくれた。
樹が変わらない態度で小さく笑んでくれたことでほっとする。
今まで通りに幼なじみで友達で。
今まで通りに大事なひとで。
これからもずっと。
そうして、樹と今まで通り変わらずに過ごして。
学校まで迎えに来てくれた榊さんと仁さんに、好きな人がいるからと樹の告白を断ったこと話すと、二人は頷いてくれた。
「りおさんの好きな人は、若ですね?」
「……うん」
「で、奏も好きなのバレバレだっつうの」
「そう、だったの?」
わたし、奏さんがわたしを好きって気持ち全然知らなかったけど……
「りおさん。昨夜、若からみんなに通達がありました」
「なんの通達?」
奏さんはみんなにいったい何を言ったんだろう?
首を傾げると、前に座るふたりが顔を見合わせて吹き出した。
可笑しさを堪えきれないようで背中が笑ってた。
「命をかけて俺の女を守れと話しました」
わたしのこと?
ちょっと恥ずかしいけど、仁さんが吹き出すほど笑えたのかな?