若恋【完】
「ちっ、しくじった!」
何発もの銃声に驚いた人たちが店の中から顔を出し、隣のスポーツ洋品店からも電器店からもたくさんの人が飛び出してきた。
くそっ
「大神の命、取り損なった!仕方ねえ、引くぜ!!」
舌打ちした男は蜘蛛の子を散らすように消えてく。
逃げてく姿にほっとした瞬間に、体から力が抜けた。
「おい!!」
漆黒の瞳がわたしを覗き込み、崩れるように傾いた体を支えた。
恐怖が抜けて痛みが襲ってくる。
「しっかりしろ!」
「若、彼女の腕が!成田のところに運びますか?」
「頼む」
「一也を呼びました。数分で到着します」
「……数分か…榊!!」
わたしを支えた人の体はものすごく熱かった。
迷惑掛けるってわかってるのに、激痛で指一本動かせない。
「若、これを使ってください」
「悪いな」
「いえ。」
痛みの先を見た。
右の小指が半分千切れて、その血がわたしを抱えた人の服を汚していく。