若恋【完】
映画を観終わりレディースルームに行くと、鏡の後ろできれいな女のひとがスッと立った。
どこかで見たことのある女性……
長くてさらさらの髪。
歳は奏さんと同じくらいの二十歳の半ばくらい。
「あ!」
そうだ。
奏さんの傍らにいたのを見たことがある。
奏さんの会社の秘書さんだったと紹介されたようなそんな気がする。
「わたしから奏を取り上げた気分はどう?わたしを見下してさぞやいい気分でしょ?」
―――え?何?
鏡越しの会話に後ろを振り向こうとして、脇腹に何かを突きつけられた。
銃?ナイフ?
それとも…スタンガン?
冷や汗が吹き出して背中に冷たいものが流れた。
「こんなに無防備な顔をしたネンネちゃんにわたしは負けるはずないわ」
皮肉気に笑う。
「まあ、確かに仁の好みではあるのかしらね。あなたはね、これから奏のものではなくなるの。わたしこそ奏に相応しいわ。そうでしょう?」