若恋【完】
鏡の中の彼女は片方の手でわたしの髪を掴みあげた。
痛っ!
彼女が何を言ってるのかわからない。
わたしをどうするつもりなの?
「裸にして山にでも捨ててきたいところだけど、あなたを傷つけることは仁が許さないの。無傷で仁に引き渡すことになっているわ」
「………どうして?なんでこんなこと…」
「あなたが現れて奏はわたしに振り向きもしなくなったわ。許さない。わたしのプライドをズタズタにした奏もあなたも許さない」
バシッ
わたしの頬を叩いた。
「あなたが憎くて八つ裂きにしたいと思っていたところに、仁があなたに執着していることに気づいたの。
仁がわたしに拉致を持ちかけてきたのよ。驚いた?
だからわたしは今あなたのそばにいることができるの」
「…仁さんがわたしを?」
うそ。
そんなわけない。
「奏からあなたを奪いとるつもりよ。あなたは仁にめちゃめちゃにされるの」
ウソよ。そんな…そんなこと信じない。