若恋【完】
焦燥〜奏目線〜
りおがレディースルームから戻ってこない。
携帯に電話をかけても繋がらない。
「戻ってきませんね、携帯も繋がらないままとは……」
榊が腕時計を見た。
映画を観る時に電源は切った。
だが、非常時のことを考えて、仁の携帯だけには電源は入れていた。
映画を観終わって、りおの携帯に電源を入れる前にレディースルームに入ったため、電源はまだはいってない。
さっき、りおを迎えに行った仁も姿を現さない。
電源が入っているはずの仁の携帯も呼び出し音だけが響く。
―――嫌な予感がする
「若……仁も姿を消したまま連絡も取れないとは」
不安と焦りが募る。
映画館のこんなに明るい人混みで、襲ってくることはないだろうと思い油断してたのが悪かったのか。
ほんの一瞬、目を離しただけなのだが…
仁の姿もないとなると。
りおを盾にとられ、仁は逆らえない状態になっているのかもしれない。