の行方と風の向き【短編】
先生もついにその場に座り込んだ…

そして奏ちゃんは、その場に立ちすくんでしまったので、狂犬は狙いを定めたようだった!

…誰もが奏ちゃんがやられると思ったが、その狂犬はすぐ後に震えて座っていた犬好きの大地くんに目をつけ、よだれを飛び散らせながら飛び掛かろうとしたその時…


…なんと、ここにいるはずもない、鎖を付けたままのマリオが、その狂犬に飛び掛かった!
(ここでバイブを一秒間入れる)


物凄い壮絶な格闘だった…お互いが一歩も譲らぬ形で、お互いの体に噛み付きあっていた…

生徒達は半狂乱になりながら、叫び声をあげていた。
そしてその騒ぎに気付いた体育の早瀬先生が助けに来て、その格闘を尻目に、小森先生とクラスメート全員が教室の外に脱出し、逆にプレハブ教室の中にその狂犬とマリオを閉じ込めた…。

飼い主の大地くんは泣きじゃくっていた…
おそらく大地くんの危険を独特の嗅覚と、大地くんのもうひとつの力によって察知し、ここへやって来たのだろう!


マリオは少しずつ、劣勢になってきた…
人に育てられた犬が野性化した野良犬に勝てるはずがなかった!
やはりマリオのような強いハートを持ってしても、その狂犬には敵わなかった…

その狂犬はマリオの急所に噛み付いた!
しっかりと噛み付いたその汚れた歯は、マリオの命を奪うには十分だった。

そして力無く…、最後に泣いた遠吠えは、大地の名を呼んでいるようだった…

すぐにマリオの声が全く聞こえなくなった…



『マリウォ〜〜!!』



力の限り大地は叫んだが、マリオの耳にはもう届いていなかった…





やがて、数人の警官が警察犬を伴ってやってきて、その狂犬を駆除した!




マリオは血だらけの身体のわりには、心なしか安らかな死に顔だった。

おそらく、番犬としての役割をきちんとこなし、立派な最後を果たしたからであろう!



…大地も先程とは顔付きも少し変わり、涙をぐっと堪え、マリオの体を濡れタオルで拭いてあげていた…


…大地の小さな背中は、みんなより少し大きく見えた…。
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