PEACH ~地味子の正体はSecret~
――キーンコーンカーンコーン
学校の終わりを告げるチャイムが鳴ると、あたしは我先に!と教室を飛び出した。
今日は秋の新作の撮影が入ってるから、早く帰らなければならない。
昔は面倒臭かったけど、もう慣れてしまった。
あたしは学校から飛び出して、家に向かった。
家に着くと、自分の部屋へと階段を駆け上がる。
部屋に入って鞄を置くと、クローゼットを開けた。
クローゼットからエスニック柄のベアワンピを取り出して、それを着る。
その上に七分までのニットカーデを羽織って、鏡の前に立った。
「…こんなもんか」
ふと独り言を呟き、部屋を出る。
一階の少し普通の家より広い洗面台に行くと、沢山の化粧品が並んでいるのが見えた。
その中からいつも使っているのを手に取って、軽く化粧を施す。
後はアイロンで髪を巻き、“PEACH”に行く時にいつも持っている鞄からサングラスを取り出して、サングラスを掛ける。
これで、プライベート用“PEACH”の完成。
モデルでもない、地味子でもない、プライベートの遠山奈緒がそこにはいるんだ。
ま、これで“PEACH”とも、地味子の遠山奈緒ともばれることは無いし。
安心して外に出れるよね。
「行って来ます!」
あたしは誰もいない家にそう言って、家を出た。