夏の風が頬をなでるから



サァァァァ


放課後、帰宅しようと外に出ると、雨が降っていた。


「古谷さん」


通り雨かな、
などと考えていると
後ろから、彼が声をかけてきた。


「あ、大山くん」


「涼しくなったと思ったら、雨だったんだ」


「そうみたい」


すると彼は、かばんの中から折り畳み式の傘を取り出す。


「良かったら、使って」


「‥えっ」


「じゃあ、また明日!」


彼は、雨の中を走って行ってしまった。


「ちょっ、大山くん‥!」

わたしの声は届かなかった。
彼の背中はあっという間に見えなくなる。


きっと、わたしが走っても追い付かないだろう。


< 4 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop