夏の風が頬をなでるから
サァァァァ
放課後、帰宅しようと外に出ると、雨が降っていた。
「古谷さん」
通り雨かな、
などと考えていると
後ろから、彼が声をかけてきた。
「あ、大山くん」
「涼しくなったと思ったら、雨だったんだ」
「そうみたい」
すると彼は、かばんの中から折り畳み式の傘を取り出す。
「良かったら、使って」
「‥えっ」
「じゃあ、また明日!」
彼は、雨の中を走って行ってしまった。
「ちょっ、大山くん‥!」
わたしの声は届かなかった。
彼の背中はあっという間に見えなくなる。
きっと、わたしが走っても追い付かないだろう。