Glacial HEART [短編]
落ち着くように大きく深呼吸をして
「…ごめん。何でもない…。
―実はね。今さ、好きな人にフラれちゃったの!」
「……え?」
少し後ろを振り返ると、湊都は、驚いた顔でこっちを見てた。
「だからさ…。ちょっと、苦しくなっちゃって。一人になりたいなーって思ったの。」
嘘は言ってない。
これで湊都が騙されてくれるならそれでいい。
私の気持ちに気付かれないなら…それでいいよ。
「――っねえ綺…」
湊都が何か言おうとするから、私は急いで止めた。
「湊都は!好きな子からチョコもらえたの?」
そう聞いた瞬間、赤くなる湊都。
「な、んで、それ…。」
「…ごめん。この前教室で話してるの聞いちゃった。
言ってくれれば良かったのに!」
そうすれば、
早く湊都から離れたのに。
そうすれば、
チョコなんて作って来なかったのに。