Glacial HEART [短編]
「それ…」
落ちたチョコを見ると、ますます苦しくなった。
作った自分が馬鹿みたい。
急いでチョコを拾うと、鞄に押し込んだ。
「…それ、好きな人に…渡さなかったの?」
湊都が聞く。
「あー…うん。今、落としちゃったし!捨てる…けど…っ」
―もう無理かも。
嘘つけない。
湊都にだけはこの気持ち、
知られたくなかったのに。
「…ごめん…っ。だめだ…」
涙が出てきて、上手く話せない。
「―え?」
「…ごめんね…。好きな人って…湊都のことなの…っ。でも、『友達』だって、ちゃんと…わかってるから…っ!」
ただ私を見たまま、無言の湊都。
言ってしまった後悔が胸をぎゅっと締め付ける。
「この気持ちは消すから…っ。だから、まだ、友達…で…っ」
言い終わる前に、
湊都に抱き締められた。